Wondering
もし君が
待っていて欲しいなら
いつまでも待つよ
もし君が
そばにいてと言うなら
いつだってそばにいるよ
「なんだ」
「いや、別に。見てたらダメですか」
「ダメではないけど、居心地悪い」
しゃれたカフェ。通りにはゆったり歩く人々。
木製の温かみのあるテーブルに、熱いコーヒーと一粒のチョコレート。
目の前には可愛い人。
「俺、よく人のこと見ちゃうんですよ。誰かとすれ違うときも、気になると目で追っちゃったり」
「そういうの、やめたほうがいいと思う」
彼は首を微かに傾け、通りに視線を移す。
質のいい服を着た男女。キャンバス抱えた絵描き。それを追う犬。空はまぶしい青色。
柔らかなテーブルに視線を落とし、微かに首を傾けた後、白い指がカップを持ち上げる。
口をつけただけで、一口も飲んではいないであろう角度。カップを置き、何かを探すように店内を見渡す。やがて飽きたのか、顔にかかる長い髪をかきあげ、再びカップの取っ手をいじる。
目を合わせようとしない彼に思わず笑ってしまう。すると彼がようやくこちらを見た。ため息と一緒に少しだけ口角が上がったのが見えた。
「あのな……だから、そうやって見るのやめろよ」
「だって、あなたがキョロキョロしてておもしろいから」
「お前が見るからだろ」
「はいはい。もう見ません」
先ほどの彼と同じように通りを眺めてみた。悪くない景色だ。穏やかな空気はどんな人間がいようとまるで関係ない風に世界を包んでいる。
時折カップに口をつけ、彼がしたように店内をぐるりと見渡す。
スケッチブックを広げ、頭を抱えている画家が気になり、じっと眺めていた。そんなやつらがこのカフェには多くいた。
「おい」
「え?」
「……」
「何ですか」
「……別に」
「別にってことはないでしょう」
「……」
彼は無言のまま、なかなか減らないコーヒーに口をつける。
言葉選びの下手な彼。
それでも彼が何を言わんとしているか、俺はいつだってわかっているんだ。
少なくとも、彼は自分に悪意は持っていないし、それならば俺のやるべきことだって一つなんだ。
もし君が
待っていて欲しいなら
いつまでも待つよ
もし君が
そばにいてと言うなら
いつだってそばにいるよ
もし君が
何も言いたくないのなら
俺は君のことを考えてる